外に飲みに行きたいけど行けない方の為に始めたこのコーナーですが、
今回は第4弾にして初のシェリーカスク登場でございます。
あえてファンの多い「マッカラン」や「ドロナック」などではなく、
マイナーながらコスパ最高の、タムナヴーリンで行ってみたいと思います。
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価格:3,000円くらい
今回は最後まで読んでいただくと、
どうしてマイナーだったのか?
という疑問が解決して、
気軽に味わえるモルトの1つに
なっていただけるのではないでしょうか。
【目次】
タムナヴーリン蒸留所について
「タムナヴーリン」とはゲール語で「丘の上の水車(ミル)」の意味で、
実際に蒸溜所が創業する前は、水車を動力源とした小さな羊毛工場がございました。
場所はダフタウン蒸溜所とトミントール蒸溜所の間、
B9008号線沿いのタムナヴーリン村にございます。
(リベット川のほとりに建っております。)
1966年
スコッチウイスキーブーム真っ只中の60年代に、
インバーゴードン社が、ホワイト&マッカイ、マッキンレー等の、
自社の原酒を確保する為、子会社である「タムナヴーリン・グレンリベット社」が創立。
1993年
ホワイト&マッカイ社が買収。
実は東ハイランドのグレーン蒸留所(クロマティ蒸留所)を手に入れる事が目的だった為、
タムナヴーリン蒸留所は1995年には閉鎖されてしまいます。
2007年再開
インドの会社「ユナイテッド・ブリュワリーズ」により買収。
2014年
フィリピンの会社「エンペラドール社」により買収。
(現在に至る)
2016年
開業50周年を記念して、シングルモルトをリリース。
正式な蒸留所名は「タムナヴーリン・グレンリベット社」ですが、
この頃のスペイサイドではちょっとした流行で、
グレンリベットと名づける蒸留所がとても多かったのであります。
理由は1824年にジョージ・スミスが創業した、
「グレンリべット」の名声にあやかろうとしたものでございます。
当時は20近くもの蒸留所が、
自分の蒸留所名の後にグレンリベットとつけておりましたが、
1884年の判決以降ジョージ・スミスのグレンリベットだけが定冠詞をつけて、
「ザ・グレンリヴェット」と名乗れるようになって以降は、グレンリベットと名乗る蒸留所が減りました。
因みにですが、「ザ・グレンリベット」はリベット川の側ではなく、
リベット川を見下ろす丘の上に立っておりますが、
タムナブーリンは、正真正銘リベット川のほとりに建っていますので、
敢えて、「タムナヴーリン・グレンリヴェット」と名付けられたそうであります。
黒子に徹した50年間
これはどういったことかと申しますと、
1966年に創業して、2016年で50周年を迎えるまでの間、
おそらくほとんどシングルモルトとして発売された履歴が無いのでございます。
そもそも創業したインバーゴードン社も思い返すと、
目的は自社のウイスキー(ホワイト&マッカイ、マッキンレーetc)の
原酒確保の為でございました。
1993年にホワイト&マッカイが買収した時だって、
目的は東ハイランドのクロマティ(グレーン)蒸留所を獲得することは目的でしたので、
2年後の1995年から2007年までの12年間、閉鎖されておりました。
その間おなじホワイト&マッカイグループは、
ダルモアとジュラにはシングルモルトブランドとして多大な投資を行いました。
そして、あまり人気が高くなかったフェッターケアンにもでございます。
タムナヴーリンだけが50年もの間、
ひたすら無名なモルト原酒の供給蒸留所として、
ブレンデッドウイスキーの生産を支え続けてきたのでございます。
しかしそんなタムナヴーリンにも転機がやってきます。
2016年に50周年を記念してリリースされたシングルモルトが、
フランスで大人気になったこともあり、年間販売量も3万ケースに達すると、徐々に知名度も高まってきたのであります。
こうして半世紀の間、無名だった蒸留所ですが、
実はブレンデッドようのモルト原酒を確保する為に、かなり近代的に設備されております。
使用モルト:ノンピートのコンチェルト種が中心。
仕込み:容量11トンのフルラウッター式マッシュタンを使用し、
毎週最多21回のペースで糖化をおこなう。
発酵槽:5万リットルのステンレス製が9槽あり、発行時間は54時間ほど。
スチル:16000リットルの初留釜(ウォッシュスチル)3基と、1万リットルの再留釜(スピリッツスチル)が3基。
年間生産量は準アルコール換算で450万リットル。
2007年の生産再開前に、初留釜の形状が変更されました。
【ネックを短くして、どっしりした形に変更】
重厚でリッチなウイスキーをつくり、フレーバーに深みを加えるために施された措置でございます。
初留釜には冷却効果を高めるサブクーラーがついているのに対して、
再留釜は精留器がつけてあるので、よりライトでピュアな酒質を得ることができる。
まだ他にもこだわっている点はあるのですが、
皆様ご存知でしょうか?
なんとタムナヴーリン蒸留所は、近代的とは申しましても、この規模で稼働しながら、
たった8人のオペレーターだけで運営しているのでございます。
仕込み水と冷却水
仕込み水は、地元の丘陵・イースタートンのサブタレーニアンの泉を利用しております。
こちらはケアンゴーム山脈の雪解け水が長い時間地下を流れて湧き出たお水で、
口当たりの優しいウイスキーとなる理由の1つと言われております。
冷却水は蒸留所そばのリベット川から引いています。
実はリベット川の河畔にある唯一の蒸留所がタムナヴーリンなのですが、
蒸留所の前身は一体なんだったのでしょうか?
「タムナヴーリン」、ゲール語で丘の上の水車(ミル)の意味ですが、
実際に丘の上に粉挽き用の水車があったそうでございます。
何の為にあったのでしょうね?
実は羊毛の小さな紡績工場だったらしいのですが・・・
この水車小屋がとても人目を引くビジターセンターに改装されていて、
内部には水車小屋のカラクリも保存されているとのことです。
カラクリ???
気になりますね〜
でも紡績向上の詳細は割愛させていただきます。
現在は、一般見学は受け付けられておりませんが、
河畔の草地は、ピクニックエリアとして人気でございます。
コロナが収束して現地に行けた時には、ぜひ見学だけでなく、
そこでゆっくりお弁当を食べるのも、良いのではないでしょうか。
樽の移し替えプロジュクト
全てをファーストフィルのバーボン樽で熟成!
醸造担当者のサム・ダグラスはこのように言っております。
「2015年以来、全部で樽4万本ほどある熟成中の原酒のストックから、7000本強の移し替えを実施してきました。ファーストフィルのバーボン樽ではなかった原酒を、すべてファーストフィルのバーボン樽に詰め替えたのです。以前は疲れ果てたような感じの原酒もありましたが、今ではウイスキーの品質もはっきりと向上しています。樽詰めに使用しているファーストフィルの樽が、非常に高品質なものなのです」
品質向上の鍵となるのが、樽の移し替えプロジェクトだという信念の下に、全員で取り組んだとしても、たった8人しかいないオペレーター。
この想いと、今まで55年、黒子に徹して蓄積してきた経験とノウハウが、確実にウイスキーに伝わっているのだと思います。
そして更にこんな計画(ねらい)もあるそうでございます。
ファーストフィルのバーボン樽で、リッチでまろやかな原酒を手に入れる。
シェリー樽でフィニッシュをかけ、スペイサイド特有の甘みや優美な味わいを表現。
※シェリー樽での後熟の目安は、6ヶ月〜1年ほどでございます。
6ヶ月で十分なものもあれば、もっと熟成が必要な物もある為です。
偉大なる鼻「リチャード・パターソン」
ウイスキー好きな方なら知らない方はいないであろう、
「偉大なる鼻」の持ち主、ホワイト&マッカイのマスターブレンダーにして、
ダルモア蒸溜所のマスターディスティラーでもあるリチャード・パターソン氏。
そんな彼が、2019年のスペイサイド ウイスキー フェステイバルに向けて、
リリースした商品が本日ご紹介の「タムナヴーリン シェリーカスクエディション」でございす。
こちらはラベルに熟成年数の記載はありませんが、 12年くら位の物だという情報を聞いた事がございます。
どうして記載してないかと申しますと、樽のお話の中で書いたように
熟成度は樽によって違うからでございます。
さてこちらですが、当然ファーストフィルのバーボン樽で熟成した後、6ヶ月〜1年ほどシェリー樽で後熟させるのですが、このシェリー樽のことからお話ししてまいりましょう。
ヘレスの3つの樽工房から調達したシェリー樽らしいですが、
アメリカンホワイトオークと、ヨーロピアンホワイトオークを使用しております。
どこのボデガの物かまでは公表されていないようです。
もしご存知の方がいればコメントかメッセージ頂ければ嬉しいです。
こちらの商品開発に当たっては、「お求めやすい価格で高品質のモノ」がコンセプトだったらしく、確かのお値段も普段飲みに頻繁に飲んでもお財布にも優しいので、
シェリーカスク好きな方には1家に1本のマストではないでしょうか。
因みに2021年度の【インターナショナルスピリッツチャレンジ】では、
見事ゴールド賞を獲得致しております。
タムナヴーリン シェリーカスク を味わってみよう
やっとテイスティングまで書き下ってまいりました💦
喉がカラカラでございます(笑)
それでは、いつものように、家飲みだということを想定して、
で行ってみたいと思います。
・ハイボール ⭐️⭐️⭐️⭐️
香りは、乾燥した麦麦やマジパンを思わせる香りと、
どことなく剣道の道着のような若い香りがほんのり💦
(決して臭いわけではありません、若い香りとは(笑)我ながら上手く表現したかな?)
決してふざけてるわけではないのですが味へ行きます。
口に含むと、うんまぁ〜い! リッチな味わいでございます。
冷えたアーモンドオイルのようなとろっとした口当たりとともに、
フローラルな香りのイメージが口の中に一瞬広がります。
それからすぐ次の瞬間、カカオの割合が60%くらいなビターチョコのような味わいが、
舌先に向かって戻ってくる感じがハッキリ感じ取れます。
想像できますか?
「トロふわっ」〜「舌先へ向けてビターのバックドラフト」でございます!
他にも何度も口に含んで味わっていくと色々なニュアンスがあります。
オレンジピール、マーマレードの甘苦さ、のバランスもGOOD👍
胡桃、ヘーゼルナッツ、
重たさと言いますか、舌に乗る存在感の強さも好みでございます。
飲んでいる時はそんなに強くありませんが、
ゴクっと飲み込むと鼻から抜けるシェリー香は、心地よく感じます。
アフターは爽やかなシトラス、レモン、熟してないパインにエステリーな味わいが・・・
いろいろ書きましたが、しっかりテイスティングする前に飲み干してしまいました(笑)
・オン ザ ロック ⭐️⭐️⭐️
香りはハイボールの時よりも、
オレンジの果汁やマーマレードジャムのような、甘い香りが立ってます。
口に含むと、一瞬甘いんですが、その後すぐにドライに切れ上がってまいります。
もう少し細かく申しますと、最初はふくよかなナッツや蜂蜜甘みがほんのり、
そしてシナモン、ジンジャーのようなスパイシーな味わい。
と言った感じでしょうか。
時間が経つと飲むときの香りに、シェリー香が強まってくるので、 個人的にはキスチョコの黒い方なんかをつまみながら飲むのもいいと思う。
いやそれをやると美味しいけれど、一瞬でゴクゴクと飲み干して継ぎ足してしまうのは間違いない。
コロナ明けはぜひお近くのバーで、行きつけのお店を応援のつもりでオーダーください。
「タムナヴーリンシェリーカスクエディションのロック&チョコレート」
これでいつもの倍のペースで、お気に入りのお店でお金を落とせます😁
その代わり、いつもの倍の速さで酔いますから、お気をつけくださいませ(笑)
・ストレート ⭐️⭐️⭐️⭐️
香りはかなりハッキリしたシェリー香の中に、甘いシリアル系の香りとともに、
バランスよく、ハッカ、シナモン、ジンジャーなどのスパイスも存在してます。
グラスをスワリングして行くと、焼き立てのクリームパン、マッシュポテト、砂糖菓子の少し焦げた感じや、ラズベリージャッムと言った香りを感じます。
味は、マーマレードジャムの苦甘い感じ、ラズベリーのような甘酸っぱさ、
レモンピールと言ったような、スペイサイドらしい華やかな甘み
グラスをスワリングさせながら花をグラスに思いっきり突っ込んでいくと、
甘く香ばしい砂糖菓子の香・・・ この繰り返しがたまらないのであります。
ご自宅用に是非足付きのスワリングさせて香りを楽しみやすい、
チューリップ型のスニフターなんてのも1つ欲しいですよね!
何度も回して口に含んで・・・
どんどん開いて進化していきますし、
酔っ払いさえしなければ、飽きが来る事は先ずございませんね。
舌の上に広げると、キャラメルのような甘さと、
上品なペッパーのスパイシーさもいただきました。
ダラダラと長くなって、
飲み出すとまとまりませんので、一言で締めますね!
「デイリーで楽しめるコスパ最高な重たすぎないシェリーカスク!
ご自宅に1本あると重宝すること間違いございません。」
おまけ情報
【その①】
もしボトルを購入された方は、ぜひここも見逃さないでください!
ボトルの背面のラベルの内側をよ〜くご覧くださいませ。
タムナヴーリンの象徴的な水車小屋が描かれております。
【その②】
そもそもノンピートでの仕込みが中心のタムナヴーリンですが、
もしもへビリーピーテットのウイスキーが今後発売されたとしたら、
飲んでみたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
こちらでは可能性があると言えばある!というお話なのですが、
2010年〜2013年に、インドのユナイテッド・ブリュワリーズが所有してた頃、
ごく僅かですがフェノール値55ppmの、
へビリーピーテッド麦芽の仕込みが行われた記録がございます。
2014年に現在のエンペラドール社がオーナーになってから、
2021年の現在で7年となります。
もしもあと3年くらい経って、限定販売で出て来る時があるかもしれません。
その時が来たら是非飲んでおくべきウイスキーではないでしょうか。
もちろん買って持っておくのも、希少価値が出るはずですよね!
何しろ3年間しか仕込んでおりませんから。
【その③】
1995年5月〜2007年の夏までの間、閉鎖していた途中に唯一、
2000年に6週間だけ稼働して、
40万リットルのスピリッツを蒸留した事がありました。
どういうことなんでしょうか?
なんと近所のトミントール蒸留所の従業員が、モルト原酒の不足を回避しようと、
タムナヴーリン蒸留所の設備を利用したそうであります。
なかなか俄には信じ難いのは、
文化の違いなのでしょうか?
ふと考えると、自分がガキだった頃の日本も、そんな感じだったように思います。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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